まっさらな蝉時雨「役に立てればいいんだけど」バサバサバサッ 厚かったり薄かったりする書物が そこいらじゅうに散らばった 目に優しくない青髪のパンキッシュがいう 「これからおれはどうすればいーの」 「それはきみが今から考えなければいけないことだ」 外では蝉の大群が列を成して木々に張りつく それはそれは真っ太陽のしたの蝉時雨 畳の臭いは少しカビ臭くてアオ臭くて鼻の奥がツンとして 障子は破けっぱなしの本当にどうしようもない家だった 「おれは何をしにここに来たの」 「それもきみにしか答えはわからないだろう」 オレに訊いても無駄だよ、青すぎる青髪は含み笑いをかえす 思い起こせば身体は家を飛び出して 走って走ってまた気がついたらここに居たのだ、そうだ思い出した シャワシャワシャワシャワ蝉が脳をぐりんぐりんと回転させる 「ここは一体何処なの?」 「それも、きみ次第だ」 なら、夢で在ればいい それならこれは全部夢だね 出された麦茶はお手製なのか 苦すぎてぬる過ぎて勘弁だったが それならこれもあれもそれもどれも 全部夢だったらいいと思う。 まっさらな蝉時雨 |